Arabicabeans’s diary

認知症の母とMCIの父の介護記録

どこが家?

私は、100キロ離れた自宅から電車を乗り継ぎ、3時間かけて介護のために両親宅に通っている。

主には、認知症の母の介護は90歳の父に任せている状態だった。が、その父が不整脈で意識消失して入院してしまった。

 

幸い2週間ほどで退院できるということであったが、認知症の母を家に一人で置いておくわけには行かない。

 

母は、洗濯、掃除はもちろんできないが、電子レンジで食事を温めることもできない。何より、父が入院したことを理解できないので、夜、父がいなかったら、外を探し回りかねない。

 

ただ、ちょっと腹が立つのは、本人は自分が自立して生活できなくなっていることさえも理解できないために、「大丈夫よ。お母さんは一人でもできるから。いつも料理だって、やってきたんだから。」と、人の心配をよそに能天気にいう。

 

私は、母に「お父さんは、具合が悪くてしばらく入院するから、お母さんも、しばらく施設で待っていようね。」と言ってショートステイでしばらく過ごすことを伝えた。

 

「そんな所に入れられるんなら、死んだほうがましよ。」と言って、子供のように大泣きした。何とも大げさだが、私のこれまでの人生の中でも母が感情的に泣き出したのは、初めてだった。短期的だが、施設に泊まるというだけで、不安になってしまうのか。

 

可愛そうだが、私も何週間も母と一緒に実家にいるわけにもいかない。頼んでおいたショートステイのお迎えの車が来た。

 

母は、助けを求めるような目で私を見たが、私にも生活があるので、心を鬼にして「1週間たったら、迎えに行くからね。」と言って、送り出した。

 

1週間して迎えに行き、帰る車の中で「大丈夫だった?」と聞くと、あんなに大泣きした母が、「別に大丈夫よ。」と答えた。おそらく、そこに1週間いたときのことも、思い出せないのだろうと思う。

 

しかし、その晩、母が夜中に起きて来たようなので様子を見に行くと、私にこんなことを言った。

 

「もう、こんな所に入れられて、死んだほうがましよ。もう、家に帰ってもいいかしら。こんな所には、もういられないわよ。」

 

もはや、家に戻ってこようと、施設に連れていこうと、私が責められることに変わりはない。